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プール事故とビルメン業界

ビルメンテナンス情報
プール事故とビルメン業界

著 木村光成 先生

埼玉県のプール事故が問題になっている。事故の当時者はビルメンだ。
ここで問題になる点は2つある。
1:下請けの登録を行わなかった。
2:十分なマニュアルが存在しない。

埼玉県は、東京や横浜と比較して無風地帯といわれている。しかし、今回の問題で、ある程度の見直しが要求されるであろう。下請け・孫受け問題や指定管理者問題も、実情はほとんど表に出ていないが、内容を掘り下げた分析が行われる可能性が出てきた。
また、時期的にグリーン購入法が実施され、今までのように抽象的建前的な実施ではなく、横浜市で見られるような具体的な数値に基づいた実行が要求されている。その場合、提出されているビルメンのマニュアルが、ビルメン現場の首を絞め、今回のような場合、建前だけのつもりだった仕様書やマニュアルが、白日の下にさらされないとは限らない。

ビルメンマニュアル、契約書、仕様書の大幅な見直しが必要である。その理由は、ビルメンが使用しているマニュアルはメーカーに作らせたものであり、ビルメンが作成したものは、ほとんどない。提案書も報告書も、資機材メーカに作成させているものがほとんどである。
現実に、文章があるだけで実行されていないものや、実行できないものもある。これ等のマニュアルが、軽度な事故であれば大きな問題にはならないが、人身事故も怪我と死亡事故とでは雲泥の差がある。回転ドアも怪我の事例は多数あるが、死亡事故1例によって大問題になった。シンドラーエレベーター問題も同様である。
メーカーのマニュアルの中身は、外部用のものは非常に甘い内容が多い。
マニュアルの注意点は、言い替えれば商品の欠点である。欠点は出したくない。わかりやすい例では、弗酸や燐を含む洗剤も、清掃機械など、特にISOを取得していないアメリカの輸入品には必要な表示が行われていない製品が多く、説明にすり替えが多い。
洗剤による死亡事故はほとんどないため大きな問題にはなてちないが、手あれなどの小さな事故は多数起きている。と、いうことは、やがては大きな問題に発展し、ビルメンの責任が直接問われる可能性もある。

このような場合に備え、ビルメンマニュアルをビルメン自身が作成する必要がある。
そのためには、作業の対象品、洗剤、清掃機械、設備などについて、理論的に熟知した研究者をビルメンが養成することである。現在のようにマニュアルや提案書、契約書をすべてメーカーや販売業者に丸投げ作成している状態では、欠点や危険を回避するビルメンマニュアルの作成は無理である。
少なくとも、ビルメン関連での死亡事故を起こさないことである。現在でも、弗酸系洗剤や自動床洗浄機による人身事故の可能性は高い。

写真:開店にあわせて通勤時間帯に清掃を行うため、接触事故が多い。また、転倒や階段からの転落事故もある。具体的マニュアルが必要だろう。


あらゆる事故に関するビルメンの責任を考えておくために、今回の事故を見過ごしてはならない。また、今回の事故で元受と下請けの責任分担も重要であろう。これは、今後の重要な判例になることは間違いない。
元受はかなりの物件の指定管理者になっている。指定管理者の物件は、行政が赤字で、これを民間に委託して赤字を解消する意味合いが大きい。この場合、人件費の節約が行われることが多い。しかし、安全管理に関する人件費の節約は、事故につながる要因になりかねない。

極論すると、清掃の手抜きは人命にあまり関係ないが、危険予防のための見回りや補修の手抜きは、人命に関わることが多い。日常管理の頻度が多いことには、不審者のチエックという意味がある。
しかし、危険予防の教育も、下請けでは、そのための時給を払わないため、行わない場合が多い。また、ビルメン協会の教育では具体性に欠け役に立たないことが多い。なぜならビルの構造、設備など、すべて異なるからである。今回の場合を含めて、その現場のためのマニュアルは存在しないし、あるとすれば文部省や厚生労働省の抽象的なマニュアルの引き写しがほとんどである。そして、協会の労災防止マニュアルは労災保険の負担軽減が目的である。
その上、現在これ等の施設は多様化している。波の立つプール、大型滑り台、さらに温泉とプールの区別がつきにくくなっている。レジオネラの危険、塩素の危険など、特定の特殊な現場で使用するマニュアルと教育が必要である。

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