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積算見積もり手法の見直しの必然性

積算見積もり手法の見直しの必然性 積算見積もり手法の見直しの必然性

著:木村光成 先生

初めに
 積算見積もり技法、いわゆるビルメンテナンスにおける原価計算は、現場で取り組まれて約40年になる。
 しかし、ある程度組織的に取り組まれたのは1970年代であり、ハウスクリーニング協会とビルメンテナンス協会が、ほぼ同時に取り組みを始めた。
 おそらく当時厚生省指導課と企画課からの内示があったと思われる。また、同時に原価計算の不可欠な品質基準の研究も、厚生科学研究として見えない汚れ(ハウスダスト)研究についても、取り組みが始まった。
 このように、原価計算と品質基準は車の両輪である。品質が不明であれば価格も決められない。原価計算に比べ、品質基準の研究は大幅に遅れているというのが現状である。
 ここでは原価計算研究の流れを追ってみる。現在資料等形のあるものを列記する。


1:1978年ビルクリーニング作業研究、上の原資料
  ビルメン情報センターによる積算資料、春原資料

2:1989年初版 日本ビル新聞、積算と見積もり、
  毎年1回ずつ発行され17冊になる

3:1990年 東京協会  原価計算の手引き

4:1991年  全協   清掃管理業務見積

5:1995年  保全業務積算の取り入れ

注:
 1990年代から受注価格金額のアンケートは、独禁法にかかるため作業時間アンケートに切り替えて現在に至っている。すなわち、作業時間に人件費を乗じた数値が原価の基礎になるわけである(アンケート資料参照)。そして、その原価から見積もり価格が算出され、それが受注価格につながる。


 現在の積算の主流は、全協の清掃管理業務見積もりである。ところが、1990年代の半ばから、関連協会から発表される積算数値と実際の数値との差が出始め、最近はこの差があまりに大きく、関連協会や積算と見積もりの発表数値が使えない状態になっている。

 このような現象が顕著になりだしたのは、バブル崩壊期以後である。それまでは毎年10%程度の値上がりが順調に行われてきた。関連協会のアンケート調査も、毎年の10%値上げの裏づけの意味に使われ、それに近い数値が出ている。ところが、バブル崩壊後大きく値崩れがおき、受注価格も最盛期の30%程度の現場がかなり多い。
 しかし、主に作業時間と人件費で構成され、それが反映される受注価格が30%になるならば、作業時間も人件費も、少なくとも30%以下でなければならない。ところが、建物が変わらなければ、少なくとも作業面積は同一である。となると受注価格低下分は、どこで吸収されるのであろうか。

 ここに東京都庁の数年間の受注価格が公表された資料がある。
 そのグラフを見ると、受注価格は30%を切り、しかも前年の50%を越える乱高下を繰り返している。このグラフは、よく最高値と最低値を除外して計算される場合が多い。しかし、理由を解析すること無しに単純に最高値と最低値を切り捨てることは、ビルメンの場合危険である。
 これと同様の現象は、作業時間のアンケートにも見られる。物品販売ではこれほど大きな価格の乱高下は見られない。ここに来て、作業時間アンケートを基準にした見積り手法と、現実の受注価格との矛盾が無視できない状態にある。この段では、その理由は考えずに、現状だけを認識して論を進めたい。

参考資料:都庁受注価格分析


1) 現在の見積もり手法の矛盾はビル管法成立の歴史にある。
 わが国のビルメンテナンスの歴史は、横浜から始まったともいえる。
 1950年代、かなりの人々が駐留軍の清掃の仕事を行っていた。そして、ポリッシャーもアメリカ製のヒールドの払い下げを修理して使用していた。未だにヒールドがカーぺットクリーニングで使用されているのは、この流れの影響にある。現在それを使用している人たちは、その経緯を知らず無意識に使用している。
 さらに、現在のビル管法も、ビルクリーニング技能士も、積算、見積もり手法、インスペクター制度までもが50年前の駐留軍の手法、いわゆる『ミル規格』の流れの影響下にある。ポリッシュ工業会の規格も、アメリカ規格の丸写しに過ぎない。今使用しているビルメンテキストの自動床洗浄機の図は、40年前の資料であることを知る人は少ない。

 そして、お手本にした駐留軍規格の矛盾が噴出してきたのが、今、我々が直面している問題である。
 米軍規格では、清掃の品質、すなわちきれいさはマニュアルで管理されている。そして、適正作業時間、すなわち原価管理もマニュアルである。そして、その根底にあるのが、テーラーによる科学的管理法である。これに対してULではISOが採用されているが、アメリカは未だ、インチ、ガロンを使用している。
 もうひとつの清掃の柱である環境衛生、すなわち見えない汚れに対しては、ペストコントロールで対応している。すなわち薬品散布である。
 そして全ての流れは、マニュアルどうりに行われていれば、品質も価格も計画したとおり適正に維持できるわけである。現在のインスペクションも当時のマニュアルそのままである。それは1960年代の厚生科学研究などに色濃く出ている。先に述べた1970年代の自在箒やモップの動作研究は科学的管理法そのものであり、現在のアンケートもこの流れの上にある。
 ところで、このマニュアルシステムの利点は簡潔であり、教育上も効率がよい。しかし、そのためにはマニュアルの後ろに、実験に裏付けられたデータベースの存在と、その場の適したマニュアルを伝達できるシステムの存在が必要である。今回のスペースシャトルの船外活動がそのよい例である。

 さて、なぜこのシステムの矛盾が出始めたのだろうか?
 その答えは、ビルメンのシステムの基本は、軍隊で使用するシステムであることである。その対象は全てシステムで管理されたものが対象である。そして、それらは最もシステムに適合する対象、すなわち建築素材である。

 ビルメンと同じシステムを導入したのがクリーニング業界である。この例を見るとわかり易い。
 対象とする衣料は軍服である。材質、強度、汚れやすさ、汚れの落ちにくさ、耐洗剤性など、全て厳密に決められている。このため、洗剤や洗浄条件など全て同一でよい。フオードシステムそのものの完全流れ作業が可能であった。
 ところがたちまち矛盾が表面化した。
 クリーニング対象の衣料は生活が向上するにつれ多様化してきた。これに対し、マニュアルを多様化し、流れ作業ラインを増やしたが、とても対応できなかった。
 これが表面化したのが白洋社の特別クリーニングである。特別クリーニングとして高額な代金をとりながら、作業内容は同じであり、包装が異なるだけであることが内部告発で明らかになった。
 そこで、クリーニング協会では技術教育に力をいれ、溶剤による洗浄(ドライクリーニング)を取り入れるなどして、矛盾を克服してきた。しかし、現在、溶剤規制などによる問題の取り組みと、品質の低下と、価格の押さえ込みに必死の状態である。

 これに対してビルメンの場合は、この矛盾が最近まで表面化しなかった。
 その理由は、品質の物差しがないことと、品質低下がクレームになりにくいということである。
 ビル自体は個人の物ではない。特に公共物件は品質(汚れ)の低下に鷹揚である。衣料であれば少しでも汚れが残ればクレームの対象になる。
 その上、地球環境や室内環境問題の波をほとんど受けていない。これらの波を受けているペストコントロールや溶剤使用禁止で大幅な設備改善を行ったクリーニング業界、ダニ騒動で大きな痛手を受けたカーぺット業界とは大違いである。
 このように、他業種では20年以上前に対応している修正が、ビルメン業界では行われずにいが、ここでついに矛盾が表面化したということである。また、使い方ではマニュアルを手助けできるISO制度も、ビルメン業界では形骸化しているのが現状である。


2)バブルの波に積算の矛盾が飲み込まれた
 積算価格と受注価格の矛盾が表面化しなかったのは、バブル崩壊まで順調な値上げできたことに理由がある。一時期狂乱物価もあったが、それは一過性の現象に過ぎなかった。
 協会のアンケート調査も毎年10%値上げでうまく収まり、人件費、資機材値上げで理由も付けられた。元受も下請けもパイを享受できた。
 そして、この時期に導入されたカーぺットも、ビルメンにとりかなりの追い風になった。
 初期の長尺物にはかなりクレームがおきたが、それを上回る利益があったし、カーぺットの品質も、保証カーぺットの関係で目つきも多く毛長も長く、汚れが目立たないという利点もあった。縮みなどのクレームもタイルカーぺットに切り替えられてからほとんどなく、建築素材的には、ビルメンにとり最良のものであった。
 その上、ダニ騒動で大きな痛手を受けたカーぺットメーカーに比べ、ビルメン業界は無傷であった。
 また、バブル期を特徴づける建築素材は石材である。  世界中の珍しい石材が集められ、それらが各ビルの差別化に使われた。ビルメンにとりよいことは「カーぺット3年、石7年」と言われ、その期間はほとんど手が掛からないことである。
 そのため、ビルメン業界の立場のカーぺット関連のマニュアル(テキスト)はバブル初期のままであり、石材については現在でもマニュアルが無い状態であり、販売業者任せの状態である。

 そして、この期間は積算もほとんど行われなかったし、行う必要もなかった。ある大手ビルメンの部長は、見積もりは10%値上げ、下請けは75%と決めていた。そして、それが通用する時代であった。
 営業の仕事は管理会社とのコンセンサスをとることであり、これによりますます積算の必要がなくなった。当時はビルの証券化もなく、窓口とのコンセンサスもとりやすかった。利幅のない現場では特別清掃を行い、採算を取ることもできた。
 この時期、すでに作業時間と時給からなる積算の矛盾が見られたが、気に留める人はなかった。また、ゼネコンの考えも落成式が起工式の考え方で、メンテナンスなどは気にかけなかった。


3)バブル崩壊後の積算矛盾の明瞭化
 しかし、この状況はバブルの崩壊で一変した。
 まず、特掃が無くなった。
 東京都庁の仕様変化を見ると、値引きと引き換えに、外装、定期清掃などの回数が減らされていくのがよくわかる。そして、減らすものが無くなり、値下げだけが要求されて現在に至っている。
 この時点で、歯止めのために原価計算の見直しを行う声があったが、その声は一部にとどまってしまっている。
 次の大きな変化は、ビルの証券化である。
 このために、管理会社が各社からの派遣社員による寄り合い所帯になり、今まで作り上げたコンセンサスは消えてなくなり、特掃による埋め合わせなどの融通が利かなくなり、赤字の埋め合わせができなくなった。

 管理会社の値切りの手法は当て馬作戦である。見積もりに新しい業者をいれて入札を行う方法である。
 次に、コンサルタントを使い、値切り資料を作成してくることが普通になりつつある。これに対して自前の研究を行っていなかったビルメン業界は、反論の資料を全く持たず言いなりにならざるを得なかった。
 コンサルタントの資料は、近隣の同一ビルの受注価格と品質評価、およびそのビルのテナントに対するアンケート調査である。このアンケートは、ビルメンのインスペクター制度と対比するものであり、ビルメンの三段階評価に対し、四段階評価である。この点も協会は考慮する必要があろう。

 次に、バブル期に比較的良好であった下請け孫請けとの関係も崩れ始めた。
 受注価格の値切りを下請けに回せば、下請けは良い顔はしない。そして、どこかで手抜きを行う。特にカーぺットは手抜きが行い易い素材でもある。  下請けの中の大手が元受の仲間に入ってくる、または零細な業者が組合を作り、受注するなどの動きが見られる。これらは都庁の受注数値を参照されたい。これらの業者が当て馬として参加してくる例も多い。
 平たく言えば、話し合いに応じない業者が増えているということである。

 次に、ビルの一部を借り受けた業者に、そのビルの清掃を請け負わせるという制度である。これは、バブル期にも見られた制度であり、新ビルが埋まるまでの家賃を、ビルメンに負担させるという考えである。
 これは中小ビルメンには対応できないが、大手にとっても負担になる。例をあげると30階建て大型ビルの2フロアーを借り切り、物置に使用しているビルメンもある。当然、何らかの埋め合わせか、優遇処置があるはずである。場合によっては受注価格にバックが含まれる場合もある。

 このように、バブル崩壊後の受注価格は、ますます解析できなくなっている。


4)積算手法の業界変化への対応の立ち遅れ
  定期、日常清掃の変質と多様化

 ここ10年の激烈な値下げの嵐の中で、業界の変化が起きている。
 今回のアンケート調査では、定期清掃、日常清掃、特別清掃と分かれて、作業時間と時給(広い意味で)の積として表示される見積もり価格であるが、それが大きく変化している。それらを列記してみる。

1:定期清掃と日常清掃を含んだ金額での見積もり。

2:特にカーぺツトクリーニングの場合、定期清掃の内容の差異。
 今回のアンケートでは、カーぺットクリーニングでは2ステップを定期清掃としているが、スピンパットやパウダークリーニング、炭酸ガス洗浄などを定期清掃としたり、前面バキュームを定期清掃としている場合がある。このためオーナー側のコンサルタントの調査で、1㎡:50円という定期清掃価格が提示されたことがある。
 また、リンサー作業単独の場合、中間洗浄などの用語も存在する。これらの用語は販売業者が売り込みのため作成したものが多い。

3: 自動床洗浄機を入れる代わりに、定期清掃は行わない事例。

4:管理会社が作業システムを指定してくる場合がある。   パウダー。炭酸ガス洗浄。

5:最近の建築素材の変化
 長尺カーぺットがタイルカーぺットに変化するようなコスト低減、すなわち作業負担の軽減につながる場合は問題がない。
 しかし、ビル自体が低価格で見栄えのよいことが要求されることは、安い材料の使用ということになる。この場合多くはバブル期のものより作業負担が増える場合が多い(事例:ライムストーン、ハイロウカーぺット)。

6:環境に対する規制が広がり、ビルメンにマイナスに働く。 フローリングの増加、塗装のない無垢材の使用、接着剤の性能低下、ワックス使用に対する風当たりも強くなる。剥離排水の処理費用負担もある。

7:清掃資材の中に低品質のものが見られる
 輸入清掃機械の中にカタログ数値の60%しかないものもある。

8:上記の情報を現場に伝える手段が無いと共に、対策も取れない。
 これらのマイナス要因は形を替え、積算にマイナスに働き、現実との差異が大きくなる。

 以上が、アンケート調査と現実の受注価格の矛盾の生ずる外的要因といえる。


5) アンケート調査の矛盾点の原因分析
 このアンケート調査は川上から川下への調査であり、協会が関連した調査と受け取られており、本音が出にくい。どの業界もそうであるが、ビルメン業界は特に見積もり積算に関する調査は高い数値が出てくる。協会自身が発表数値を低すぎると言ってくることもある。
 現場を対象とした20年来の聞き取り川下調査(カーぺット、石材がほとんど)では、価格帯がきれいに2つに分かれる。これは元受ビルメンと下請けビルメンであることは明白である。もちろん作業法や作業機械も、不明のものはその場で聞き取りを行っている。ところが本調査でもそうであるが、この数値を切り落としたり、単純に平均化してしまうことが多い。  次に、回答者は各会社の本社であることが多く、下請けの、まして孫請けの作業法や価格までは知らないし、もちろん公表もしない。
 回答者が質問に合わせて回答してきている可能性も高い。すくなくとも特別清掃、定期清掃、日常清掃の区別は、2003年ビル以降不明確になりつつある。

 あるコンサルタントの、再契約時の要望を記載する。
『我々管理会社は予防メンテナンス理論の、汚れる前に清掃するという作業を期待している。これが完全に行われていれば、定期清掃や特別清掃は必要ないわけである。必要な理由はビルメン業者が完全な予防メンテナンスを実施できなかったことが原因であり、その費用を管理会社が負担する理由はない』
 予防メンテナンスを逆手に取った値切りの手法である。
 以上のようにすくなくとも4つの原因が認められる。

6) 新しい積算見積もりの方向性と組み立て。
 以上の論旨から、従来の積算、見積もりデータの取り扱いと、今後の積算見積もりの手法を思索してみる。
 結論から述べると、従来の積算、見積もりをそのまま現在の現場に適用することはできない。建築素材、作業技法などの多様化に対処できないことは明白である。
 その上、管理会社の価格要望もある。インスペクションも第三者の裏づけがない以上、積算に導入しにくい(ビルディング協会が認めたわけでない)。また立地条件の悪いビルオーナーからは、汚くとも安いほうがよいという要望も増えている。

 現在の積算、見積もりは、アメリカ流のやり方だけ教えて理論を教えないマニュアル万能主義で組み立てられているため、現在の多様化に対応できない。

新しい積算の方向付けは――
1: 実際の現場に適応する、理論教育を現場で教えるヨーロッパ流のマイスター教育への切り替えにより、高度な技術を持つ現場責任者の育成。
2: 積算見積もりの不一致の原因である、マイナス要因(ファクター)の除去。
3:テキストの修正と過去のデーターのデジタル化による、新しいデータベースの作成

以下に修正の手順を示す

手順1)現在のアンケートデータ(標準作業時間)は、統計的処理を施し、傾向を知る資料として取り扱う。
 これらの数値は絶対的真実ではなく、相対的真実である。絶対的真実数値は、一度の作業に一回しか存在しない。一回しか存在しないという意味は、同じ現場で同じ作業をしても、汚れの状態が同一ではありえないということだ。また、作業者の熟練度により大幅に差が出る。特にカーぺット洗浄では、クルーにより、その差は単独作業より大きい。

手順2)各現場ごとの積算  すなわち作業時間、作業量を積算し、絶対的数値を算出する。原価計算でいう全費用を加算した加工費工程別総合原価計算ということになる。  このとき、床材、現場の構造などを記録し、それぞれの現場との差を素材別難易度、場所別難易度、作業者別難易度など各要素に分類しておく。
(現場測定データ)(現場作業時間)

手順3)技法別難易度測定
 各技法別の作業時間を現場測定、またはモデル現場で測定し、難易度数値を作成しておく。それと同時に性能測定および作業時間を機種ごとに測定しておく。
 そして現場でのクリンクルーの能力差を動作分析から取り出して、よりよい動作を指導できる現場責任者の養成。
注:このために試みの会では、ジョンソンフロアラボに各種床材と技法別機材、測定機材(アワーメーターなど)を整備しつつあり、これを実験計画法に基づき運用し、データを作成する。

手順4)難易度の作業時間への負荷率を決める
 これにより、標準作業時間と現場作業時間の関連付けと互換性が確保でき、現実の数字との差異が埋められる。

手順5)アメリカ流マニュアル万能主義の見直しと、ヨーロッパ流マイスター制度取り入れ
 適正時間、適正人員、適正価格とは、次回まで疲れを持ち越さない範囲で、最大の効率を上げるための、時間、人員の組み合わせにより算出される価格といえる。
 マニュアル万能主義は、やり方は教えるが理論は教えない。いわゆる拠らしむべし、知らしむべからず、の教育法である。代表的な例はパットの色分けである。何番のどの種類の研磨剤を使用しているかは知らせず、赤、青、黒などの色で覚えさせ、研磨剤の理論は教えない方式である。
 これに対するマイスター制度は、実習を主体にして理論を教え込む方式である。マニュアル万能主義は中程度の作業者を大量に作り出すにはよい方法であるが、高度な技術、マニュアルを作成できる技術者は生み出せない。特に最近は通信教育で紙の上でほとんどすましてしまった現場責任者が多く、現場の技術力低下を招いている。その現場に置ける適正時間、適正人員、適正価格を生み出せない。
注:このために実験セミナーにより、現場で使える技術と理論を教育する必要がある。

手順6)ビルメン現場から見て間違った理論、知識の排除、修正。テキストと現場の遊離
 ビルメン現場のマニュアルの中には、メーカーの販売マニュアルがかなり入り込んでいる。この中に多くの間違いがあって、これが間違った作業からクレームを生み出す潜在原因になっている。
 すなわちクレームの原点と呼ばれているテキストの間違いである。最近は特に外国製品のマニュアルに嘘が多い。それは現場マニュアルではなく、商品販売マニュアルであるからである。
 これを正すためにはビルメン自身の研究が必要になる。最も信頼できるマニュアルは、厚生科学研究であり、これがほとんど活用されていない。

手順7)ビルメン業界の過去のデータの収集と整理
 過去40年の資料が関連協会から廃棄されつつある。これを防ぐため、試みの会では資料の収集を行って、そのデジタル化に取り組んでいる。

手順8)ビルメン関連資材の嘘を見抜く知識
 ① 清掃機械の見わけ方
 ② 建築素材の見わけ方
 ③ 洗剤の見わけ方

手順9)環境問題へのビルメン自身の研究による取り組み
 ペストコントロールへの丸投げでなく、清掃の環境問題への研究の取り組み
 利用を禁止している横浜研究――  ①環境問題解決はハウスダストの除去  ②好乾性カビ類の環境への影響  ――以上の活用

手順10)多様化に対応するための、現場でのパソコンの活用教育と、ソフトのビルメン自身による開発


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