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好乾性カビがハウスシックの原点

ビルメンテナンス情報
好乾性カビがハウスシックの原点
今後の厚生省発表を予測する

著 木村光成 先生

厚生省でハウスシックの最終研究がなされている。フォルムアルデヒド(VOC)が無くなればハウスシックは無くなると一般的に考えられている。しかし、原因はこれだけではないという通達を、厚生省は何回か発表している。ハウスシックの原因は、花粉やカビ、ダニなどで引き起こされるアレルギー反応であるという結論になるはずである。その中で、好乾性カビが大きな役割を占めている可能性が高い。好乾性カビとは乾燥に強いサボテンのようなカビであり、目に付きにくいカビである。

 カビといえば、浴室のカビ、またはパンなどに生えるカビである。好乾性カビは湿度60%程度で生育する。そのため我々が生活する居間や寝室に多い。さらに大きな問題は、ダニ(チリダニ)との共同生活をしている点である(写真:好乾性カビ、1980年)。
特にカーぺットの中に多い。これだけでハウスシックに関係することは理解できる。そして、居間や寝室に多いということは、我々の健康に大きく影響するカビといえる。
我々は一番カビの多い浴室では長い時間をすごさない。つまり湿度の高い場所を好む高湿性カビよりも、好乾性カビの影響が大きいことになる。好乾性カビがいることはダニが生息していることの証明であり、ダニがいることは好乾性カビが生えていることである。好乾性カビ類のハウスシックとの関係は、我々の知識ではまだ明確とはいえないが、少なくともダニがハウスシックに大きな関係があることは間違いない。

好乾性カビの研究は1980年代のダニ騒動の時、厚生省の研究で明確になった。
ダニとともにカーぺットの内部に生息する好乾性カビ類の存在が明らかになり、同時に清掃の役割の大きさが、世界に先駆けて明確になってきた。しかし、この時はビルメン業界、特に清掃委員会では、好乾性カビ類とダニは家庭の場合であり、ビルには関係ないとの考えであった。そのため、この時点から現在に至るも好乾性カビとダニの関係はテキストにも記載されていない。
「好乾性カビは3000㎡以上のビルにはいない。万一、ダニやカビが存在しても、対応は薬品散布によって行う」という原則が出来上がった。好乾性カビは一般家庭、すなわちハウスクリーニングを管轄する厚生省の指導課であり、ビルを管轄する企画課の範疇にはないという考え方である。
ところが今回、この30年間の研究で好乾性カビがハウスシックの原点である可能性が出てきた。好乾性カビとダニは環境と条件が整えば建物の大小には関係ない。ましてや管轄する官庁には無関係であるということが明白になってきた。
また、清掃がハウスシック対応に欠かせないということである。ダニを殺しても、死骸がハウスシックの原因になるからである。最近、カーぺット業界はダニを殺す薬剤は使用せず、ダニが嫌がる薬品を使用している。ダニにカーぺットで死なれたら困るからである。
ダニやカビの住処と食物であるハウスダストを取り除くには清掃しかない。ビルクリーニング業界も、眼に見えない汚れの除去、すなわち好乾性カビの存在と過去の研究を、テキストに記載する時期でないだろうか。

好乾性カビやダニの存在を明確にしたがらない理由のひとつに、パウダークリーニング販売業者からの反対があった。
「水を使うクリーニングはカビが生える」という主張は、目に見える高湿性のカビのことであり、これ等の原因は水を使うことより、コンクリートからの水分や結露が原因であることが明らかになりつつあり、その結果がハウスシック対策には換気が絶対条件となり法律化されている。言い替えれば、カーペットを濡らしても、その部屋の湿度が高ければいつまでも乾かないということであり、わが国では乾燥し難い湿度の高い部屋が多いということである。反対に、乾燥したカーぺットを湿度の高い部屋に敷くと、部屋の湿気をカーぺットが吸いこみ、カビが生える原因になる場合が多いことである。特に夏の時期にはわが国は欧米より湿度が高い。
また、パウダークリーニングには、木やとうもろこしを使用する。そしてその残留物は好乾性カビの培地になる危険性も多い。それにパウダーが残留するということは、健康に良いとはいえない。

 現在のビルメン業界は、顧客満足度を外見のきれいさだけに求め、顧客の健康維持については一言も言及していない。
確かに目に見えない汚れは金にならない。しかし現在は同じ目に見えない炭酸ガスの排出問題に世界の国々が取り組んでいる時代である。企業も社会への貢献度が評価につながる時代である。
ビルメン関連協会も清掃の目的を明確にすることが生き残りの道であろう。

 写真:新幹線でのカビ調査、好乾性カビと高湿性カビ用の培基2種類を使い、また高さを乗客の口の位置にしている(1993年11月)。
これによって新幹線にも好乾性カビが存在していることが判った。ビルに存在してもおかしくない。

 

 

 

 

 

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