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ビルメンヒューマンフェア'07 A

ビルメンヒューマンフェア'07

会期:2007年11月27日~29日
会場:幕張メッセ
主催:社団法人 ビルメンテナンス協会
    財団法人 建築物管理訓練センター

 ビルメンテナンスの一大イベント『ビルメンヒューマンフェア』が、幕張メッセにて開催されました。
 今回は、数多くの展示や催し物から『障害者就労支援シンポジウム』と、『総合資機材展示会』の一部をお送りします。

『障害者就労支援シンポジウム』
『総合資機材展示会』

参考:ビルメンヒューマンフェア'07(公式サイト)


『障害者就労支援シンポジウム』

1:清掃実演会
2:清掃作業支援ロボットの開発
3:パネルディスカッション
   ~知的障害者就労促進のために~

清掃実演会

 神奈川県ビルメンテナンス協会と京都ビルメンテナンス協会の主催で、それぞれ指導協力をしている養護学校の生徒さんによる、作業実演を実施しました。

 神奈川ビルメンテナンス協会では、養護学校生に対する清掃指導、課外授業の職場体験、アビリンピックへのビルクリーニング競技の導入など取組みを行っています。今回は、このアビリンピックで行われている競技内容に沿って、作業が展示されました(競技内容については、下記参考リンクを参照してください)。

 京都ビルメンテナンス協会でも、養護学校への積極的な指導や、様々な協力をされているそうです。今回は、学年の違う生徒さんたちが登場して、基礎的なものから大型の器具を用いた作業まで、それぞれに学んだことを発揮して作業を展示しました。

 以前にも同様の作業実演を拝見したことがあり、その時にも思ったことですが、作業の様子を見ているだけでは、彼らに何らかの障害があるようには見えません。
 また、京都の生徒さんたちが、競技前に舞台奥で整列した時のことです。隣りあって並んだ二人が、互いに肘で軽く小突きあいながら、照れたような表情を見せていました。そんな様子は、いかにも学園祭などで舞台に立った学生が、緊張をほぐし照れを隠すために、なんとなく友達同士ふざけあっている……そんな、よくある場面と同様に感じました。

 後述する高草木教授の研究にもありますが、知的障害者の雇用経験が有るか否か、要するに実際に見たことがあるか否かで、企業の抱くイメージや意識に差異があるようです。
 まだ雇用したことが無く、これから雇用するのにも不安がある企業の方は、こういった技能競技会や支援研究会に、一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

参考: ビルメンテナンス情報/『神奈川県障害者技能競技大会(2006年)』

清掃作業支援ロボットの開発

講師:
 東洋大学
 工学部 機能ロボティクス学科
  寺田信幸 教授

 人の生活をサポートする”共生型ロボット”を開発研究する立場から、障害者の作業支援をするロボット開発についてのお話がありました。

 会場で紹介されたのは、人(サポート対象)に追従する機能のロボットに、作業道具を搭載したシンプルな物でした。写真でいえば、作業道具のラック下部にある”銀色の箱”が、車輪走行するロボットです。
 このロボットに盛り込まれた課題としては、露骨にビデオカメラなどを設置すると、常にロボットに監視されているという不快感を与えてしまうため、なるべく監視用レンズを用いない(目立たない)ようにしているそうです。
 移動用にはセンサーによる障害物把握をもたせ、その一方で、ある程度の監視能力は必要になるので、小さくとも広範囲を見渡せる魚眼レンズによって、視覚映像を補っています(写真で、スリット状に見えるのがセンサー部分。その上の黒い点がレンズ)。

 将来的には、人の作業を手助けをすると共に、様々なセンサーによって、人の身体状態または心理状態を把握、休憩が必要であればそれを促し、救助が必要であれば通報する……といったロボットの開発を目指し、研究されているそうです。

参考:東洋大学工学部 機能ロボティクス学科

パネルディスカッション
 ~知的障害者就労促進のために~


コーディネーター:
 東洋大学
 工学部 建築学科
  高草木明 教授

 約2時間にわたって実施された当パネルディスカッションでは、コーディネーターの高草木教授を中心にして、指導教諭・雇用企業・支援団体・行政の分野からパネラーを迎え、それぞれの立場からの取組みについて発表がありました。



 まずは高草木教授より、平成19年8月に行われたアンケートについて、発表と解説がありました。アンケートの内容は、知的障害者の雇用に対する企業に宛てた意識調査で、清掃業務を実施する企業から得た、有効回答1007件に基づいています。

 このアンケートの結果については様々な数値やグラフが挙げられましたが、ここでは、このうちいくつか目に付いたものを、ピックアップして紹介しましょう。

 以降の前提として、回答企業は以下のように分類されています。

  第1群:過去10年間に、知的障害者の雇用実績が無い。
  第2群:過去10年間に、雇用実績はあるが、現在は雇用していない。
  第3群:現在、雇用している。
  第4群:現在、3名以上雇用している。
 (第3群に含まれるので、ダブルカウント)

 なお、以上の分類における全回答数に対する割合は、第1群が64%、第2群が12%、第3群が26%となっています。
 要するに大半が雇用経験の無い企業だったということです。一方で、アンケートに対して回答したということは、これら64%の企業は『雇用に関心がある』ということではないでしょうか。
 また、当然のことながら、現在雇用している企業、さらには多人数を雇用している企業の方が、症状の把握から教育方法や対処方針まで、様々なノウハウを備えていることが多く、雇用に対する抵抗が薄いことも加味して見てください。


今後の雇用方針
 現在、雇用しているという第3群と第4群において、今後も雇用を継続したいと思うか否か……という設問です。
 このうち第3群では93%(全244社中226社)、ここから第4群を抽出しても同じく約93%(全68社中、63社)が、「雇用を継続する予定」と答えています。特に第4群では「雇用を継続したくない」と答えた企業はありませんでした。

 ここからは、現在、雇用を実施している企業では、雇用継続に対する抵抗が希薄であるように見えます。つまり、実際に雇ってみたら「結果は良好だった」もしくは「特に問題なかった」ということではないでしょうか。

顧客の評価
 受注した仕事の一部を知的障害者に担当させると仮定した場合に、顧客の企業に対する評価は、いかに浮動すると思うか……という設問です。
 左写真のグラフで、左から右へ第1群~第4群、色分けは下から緑「プラスになると思われる」オレンジ「マイナスになると思われる」黄色「顧客によってプラスにもマイナスにもなると思われる」水色「わからない」紫「回答無し」となっています。

 全体的に「顧客によって……」という、ある意味当然の回答が大半を占める一方で、第4群の中にも「マイナスになる」が見られる、シビアな結果になっています。
 しかし、そんな中から「プラスになる」「マイナスになる」だけに絞って見ると、1&2群と3&4群とでは、プラスとマイナスの割合が逆転していくのが見て取れます。
 ……とはいえ、過去に雇用経験のある第2群で「マイナスになる」の割合が多いことも、無視はできない気がします。

離職率
 過去10年間に雇用実績のある、第2群~第3群に対して「知的障害者は、自社の一般社員に比べて、離職率が高いか否か」という設問です。ここで扱う離職とは、その理由を「被雇用者側の都合」に限っています。
 写真のグラフは、左から右へ第2群~第3群、色分けは下から緑「離職率は高いと感じる」オレンジ「離職率は低いと感じる」黄色「回答無し」となっています。

 第3群・第4群では「離職率は低い」の割合が、かなり高く出ています。一方、現在は雇用していない第2群では「離職率は高い」の割合が約47%と高く出ているのですが、そんな第2群においても約32%の企業が「離職率は低い」と答えています。
 ここから、離職率については一般的な社員と同等、もしくは、むしろ離職率は低いと読み取れます。

*なお、上記のグラフについてのコメントは、高草木教授による分析ではなく、当記事の著者個人による感想なので、ご注意ください。


 以上には比較的肯定的に見えるグラフを挙げましたが、アンケートの結果には、特に第1群の意見を含むものには、雇用に対する不安など、否定的な要素が目立つものもありました。
 そのうえで、高草木教授はアンケートの成果を、以下のように結んでいます。
むすび(高草木教授の発表より)

知的障害者のビル清掃への雇用の阻害要因
・顧客の実際の拒否、あるいは顧客の認否についての、ビルメンテナンス会社側の悲観的憶測
・雇用企業からの知的障害者の清掃作業労働力としての評価
・教育・訓練や作業管理の負担

 第1群から第4群へと、知的障害者雇用に対する積極性経験の深さが高まっていく。これにつれて、これらの阻害要因の深刻度が薄れてゆくことが、本調査の分析によって明らかになった。


 高草木教授の発表に続いて、障害者雇用支援に携わるパネラーによる、それぞれの立場からの活動報告がありました。

川崎市養護学校/教諭
吉田宴 先生

 知的障害者の傾向について。
 生徒を指導するために、指導する側の受けた教育などの取組みについて。

 知的障害者の傾向については、抽象的な言葉(適当にやっといて/だいたいでいいよ……といった指示)の理解が苦手である。計算が苦手である。その一方で、一度憶えた仕事はコツコツと行うことができる。反復作業に耐えられる特性があり、これは、定められた作業を継続する日常清掃などに適正がある……といった説明がありました。

株式会社ヒューマックス/代表取締役
澤田英治 氏

 広島ビルメンテナンス協会の取組みについて。

株式会社美交工業/専務取締役
福田久美子 氏

 支援団体と企業の連携や取組みについて。
 大阪ビルメンテナンス協会の取組みについて。

千葉障害者就業支援キャリアセンター/センター長
藤尾健二 氏

 支援団体の取組みについて。

 支援センターでは、被雇用者の生活サポートなどを行う一方で、雇用実績する側に対しても、基本的な事柄から相談にのっているそうです。
 たとえば、実際に障害者を就労させる前に、支援センターの職員が、実際に現場の作業を体験することで、就労が可能か否か判断したり、また、働くうえでの問題点を検討するといった試みも行っているそうです。

千葉県商工労働部産業人材課/障害者就労支援室長
原田良子 氏

 行政の立場からの、支援体制の歩みについて。
 県庁舎内における、障害者試験雇用の実施報告。


 以上の発表の後、パネルディスカッションは会場全体を対象にした質疑応答を経て、終了しました(なお、客席からの質問や発言はなく、質問を発したのは高草木教授だけでした)。

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