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18年度 第6回こころみの会 『ワックスの剥離廃液処理』

18年度 第6回こころみの会
『ワックスの剥離廃液処理』

実施日:2006年12月21日
会 場:ジョンソンディバーシー株式会社
主 催:こころみの会

2006年末、横浜のビルメンテナンス関係者が集まって『ワックスの剥離廃液の取扱い』をテーマにした勉強会が開催されました。
処理装置や産業廃棄物処理など、関連企業の方を講師に招いて、それぞれの見地から、剥離廃液を取り扱う上での注意や取組み、関連製品のアピールも含めた講義内容となりました。


講義1:小島商事株式会社 『剥離廃液の処理方法』
講義2:日本整油株式会社 『産業廃棄物業者から見た廃液の処理方法』
講義3:株式会社タムラテコ 『オゾンによる排水の浄化』

講義1
小島商事株式会社 『剥離廃液の処理方法』

最初は埼玉県に本社を置く小島商事株式会社様より、法規制に従って剥離廃液を扱う難しさと、それ以上に、剥離廃液を不注意に扱えば、どれだけ大きな問題になるかというお話。後半は、ビルメン業者が剥離廃液を自社内で処理するために用いる処理機材『水明くん』の紹介でした。

ここ数年で、環境への取組みが変わり、ビルメンテナンスの現場においてもワックスの剥離廃液処理が大きな問題になってきました。環境問題への関心が低かった過去においては、ともすれば何も言われることなく、考えなしに垂れ流すことさえあったものを、これからは十分な処理をしてから廃棄することになります。当然、従来にはなかった処理コストがかかるようになるので、それも作業代金に計上しなくてはなりません。

この剥離廃液を扱う責任(排出者責任)の所在が何処にあるかといえば、事業所(現場)で排出する場合は、下水道法によって事業所の責任になります。つまり、作業現場で不法廃棄があれば、現場のオーナーに迷惑をかけることになります。一方、ビルメン業者が持ち帰れば、その後は業者の責任になります。
剥離廃液を規制する法規については以下のものが挙げられますが、実際に問題が起きた時、どの責任において対処するかは曖昧で、自治体や役所によっても見解が変わるようです。

関係法規
水質汚染防止法 河川に流す廃水の規制
下水道法 下水に流す廃水の規制
浄化槽法 浄化槽に流す廃水の規制
廃棄物の処理および
清掃に関する法律
産業廃棄物に関する規制

絶対にしてはならないのが、公共河川への流出です。これを行えば、産業廃棄物の不法投棄として、刑事事件になります。また、そのつもりがなくても、結果的に河川に流れてしまったという結果論で罰せられることにもなりえます。実例として、作業者が雨水ピットでワックスモップを洗ったため、水が白濁して調整池に流れ込んだという話が挙げられました。

もし廃液が流出してしまった場合、洗剤やワックス、剥離液は水溶性のため、油のように回収することができません。流出経路を確認して水を堰き止め、それより上流の水をバキュームカーなどで回収するしかありません。
流出事故を起こした業者には、汚染された水の回収義務があるばかりでなく、流出経路の配管洗浄も行い、最終的に行政の指示を仰ぐ必要が生じます。
ここで、下水の配管が塩ビなどであれば洗浄だけで済みますが、田舎などで土を汚染した場合は、土の入れ替えが必要になるかもしれません。さらに収穫前の田んぼに流れたりすれば、損害賠償を請求されることも考えられます。加入している損害保険についても、見直しておいた方が良いでしょう。

このように、廃棄物の取扱いには、ちょっとしたミスや知識の不足から大問題に発展して、会社の経営も立ち行かなく可能性を孕んでいます。こういった事件や事故を防ぐためには、基本原則として廃液や薬品を屋外に排出しないこと。また、企業の代表者だけでなく、作業者に対しても、小さなことから大問題に発展するということについて、教育を徹底しておく必要があります。
将来的には、コストや汚染事故のリスクを低減させるため、ワックスの塗布剥離回数を削減して剥離周期の延長を図る必要があるでしょう。

下水道に流す際の生活環境項目
PH(水素イオン濃度)
PHが12.5を超えると『特別管理産業廃棄物』の扱いになる。
剥離剤(原液)にはPH13以上の強アルカリ性の品が多く、作業後の剥離廃液は産業廃棄物であるから、下水に流すには中和が必要となる。
BOD(生物化学的酸素要求量)
BODとは、バクテリアが汚れを分解する際に必要とする酸素量で、値が大きいほど汚れている。
一般的に、剥離廃液のBODは下水道法の規制値を大きく上回る。
BOD値の例
剥離剤(原液) 1000000~1300000[mg/L]
規制値 600[mg/L]
上の例で、剥離剤は原液の値なので、希釈や作業方法によって、剥離廃液の段階では数値を落とすことになる。それでも規制値との隔たりは、あまりに大きい。
亜鉛
ほとんどの樹脂ワックスに含まれ、規制値が低い(基準が厳しい)
SS、ノルマルヘキサン、他
汚水に浮かぶ浮遊物質や油分にも規制値がある。


剥離廃液の処理について
・まず、MSDS(製品安全データシート)を確認する。
・自社で処理するか、専門業者に委託するかを決める。
・自社で処理する場合 PHやBODなどを基準値以下にしてから処理する。
・排出記録は保管した方が良い。
・専門業者に処理を委託する場合は、マニフェスト伝票を保管する。

以上が、講義前半の要旨です。

続いて『水明くん』による廃水処理について、実証実験が行われました。

『水明くん』は、薬品と廃液を攪拌するための”反応槽”と、処理した廃液を固体と液体に分離する”ろ過槽”と、大まかにふたつの部分で構成されています。写真では、上部の立方体が反応槽、下部の受け皿部分がろ過槽です。
処理にかかる時間ですが、作業じたいは10分ほどで済むそうです。ただし、効率的な作業を行うためには、作業対象(廃水)に対して、用いるべき薬品の適量、処理後の特性などを事前に調べておく必要があります。

商品には、一度に処理できる液量によって、20L、40L、60Lの3タイプがあります。写真のものが60Lタイプで最大容量のタイプ。御覧のとおり車載して現場に持参できるサイズです。
今回の実験では、20Lの剥離廃液を処理しました。

まずは反応槽のスイッチを入れ、剥離廃液(処理対象)の攪拌を開始します。
 
そこに”固化剤”と呼ばれる薬品を注ぎ込みます(写真左上)。固化剤は酸性で、廃液中の成分を固体化させるとともに、PHを下げる役割もあります。
固化剤の注入後、数分で固形物が生じます。この段階で、ある程度の固形物は汲み出してしまいます(写真左下の状態で、注入から2分)。
初期の段階で、20Lの廃液から、これだけの固形物が汲み出せました。
この固形物は、廃プラスチックとして処分することになります。
この時点で、反応槽に残った廃液のPH値は2~3になっています。

次に”助剤”と呼ばれる粉末(写真左下)を投入します。これによって、PH値は8になりました。
続いて”SS-カット”という粉末を投入します。これには液体と固体を分離させる役割があります。

なお、写真では反応槽にアクリル板のフタをしていますが、これは会場内で粉末の薬品が舞い散るのを防ぐためです。
 右の写真は、SS-カットを投入した直後の廃液を汲み出したものです。
左が投入直後。右は約3分後。攪拌が不十分なせいで不均一ではあるものの、白濁した剥離廃液から透明度のある液体が分離されました。
この反応は、剥離剤に含まれる溶剤によって、様子が変わるそうです。
 反応槽を停止して、廃液をろ過槽へと排出します。
その際、ろ過槽に敷いたフィルターで濾して、再び固形物を分離します。この固形物は、上記の固形物と同様、廃プラスチックとして処分します。
ろ過槽に残った液体をポンプで排出したものが、『水明くん』によって処理された処理済廃液ということになります。
 『水明くん』による処理済廃液(上写真)。
黄色がかっているのは、剥離剤に含まれている溶剤が処理できずに残っているためです。
また、処理済廃液でもBODの値は規制値を超えてしまうため、この処理済廃液のサンプルを研究機関によって分析した上で、適量(数倍~数十倍)の水で希釈してからでないと、下水に流すことはできません。

 残念ながら、処理済廃液をそのまま流すことはできず、最後に、もうひと手間かかってしまいます。
しかし、剥離廃液そのもの全てを持ち帰る場合に比べると、『水明くん』で処理して固形物だけを持ち帰る場合は、廃棄物の体積を大幅に減らすことができます。
また、極論すれば「剥離廃液そのものを、基準値以下になるまで希釈すれば良い」ということになるのですが、その場合、必要な水の量は膨大ものになります。その点、処理済廃液を希釈するならば、けっして少なくはないものの、希釈倍率は現実的な数値になるでしょう。
どう処理してもゼロには成り得ない廃棄物にまつわる数値を、現実的な値に収めるところまでが、『水明くん』の役割なのです。

最後に、使用後の反応槽(写真)は完全に乾燥すると汚れが落ちなくなるので、使用後は忘れずに洗浄しましょう(この時の廃水も廃棄物であることを忘れずに)。

参考:
製造元 MHIソリューションテクノロジーズ株式会社
上記サイト内『水明くん』

講義2
日本整油株式会社 『産業廃棄物業者から見た廃液の処理方法』

日本整油株式会社様の講義は、会社案内のビデオ上映と会社設備の紹介によって、廃棄物の焼却処理設備とリサイクル設備(溶融炉・発電施設)を周知することから始まりました。続いて、専門業者から見た産業廃棄物についての解説があり、後半は質疑応答に時間が割かれました。
質疑応答においては、会場のビルメンテナンス事業者が最も関心を寄せる「排出者として、具体的に何をどうすれば良いのか?」という点が問われました。
特に処理費用については、処理作業そのものより廃液を運搬するためのコストが大半を占めるため、いかに運搬費用を節約するかが注目されました。


剥離廃液と下水道法
まず前提として、下水道法において流すことのできる汚水の許容限度の値と、一般的な剥離廃液、一般的な洗剤廃液の値は以下のようになり、いずれの値も、特にBOD(生物化学的酸素要求量)においては大きな隔たりがあるため、そのまま剥離廃液を下水に流すことはできません。
また、下記の廃棄物の種類に照らし、剥離廃液は事業活動によって生じた固体または液状物質にあたるため、産業廃棄物として扱うことになります。

  PH BOD
下水道法の許容限度
(川崎市の例)
5~9 600ppm
一般的な剥離廃液 9~11 80000ppm
一般的な洗剤廃液 8前後 3000ppm

廃棄物の種類
産業廃棄物 事業活動によって生じた、事業者にとって利用も売却もできない廃棄物のうち、固形または液状のもの。
ガラスくず、廃プラスチック、金属くず、汚泥、廃酸、廃アルカリ、廃油等、20種類。
※剥離廃液は廃アルカリに分類される。
一般廃棄物 家庭系ゴミ、事業系ゴミ
産業廃棄物以外の廃棄物。
特別管理産業廃棄物 産業廃棄物・一般廃棄物のうちで、爆発性、毒性、感染性等、人の健康または生活環境の保全の上で支障が生じるおそれがある性状のもの。
爆発性 引火点が70度以下のもの。
属性  重金属を含むものなど。
感染性 病院から出る使用済み注射針など。

※PHが12.5に満たない剥離廃液は、特別管理廃棄物には該当しない。
ただし、剥離剤の原液状態ではPH12.5以上のものがあり、これを廃棄する場合は特別管理廃棄物になる。

産業廃棄物の排出責任者
産業廃棄物を廃棄する上での責任(排出者責任)の所在について、川崎市の見解では以下のようになっています。
・剥離廃液を下水道に流した場合 →ビルオーナーを排出者とみなす(下水道法)
・産業廃棄物としてみた場合 →ビルメン事業者を排出者とみなす(廃掃法の排出事業者)

産業廃棄物の許可と罰則
産業廃棄物の処理は、排出事業者が自らの責任で、許可者に委託して行うことになります。
ここで運搬処理を受諾する許可者には、廃棄物を収集運搬するにあたっては収集運搬業務の、処理作業をするにあたっては処理処分業務の、それぞれの許可を市や県から受けていることが必須条件です。
許可のない運搬や処理は違法で、不法投棄においては、5年以下の懲役または一千万円以下の罰金などの重い刑罰が科せられることになります。


廃棄方法
これ以下の部分については、講義の内容と質疑応答の際に挙がった回答で、内容が重複したり前後したりすることがあるので、それぞれを交えた要旨を記載します。

廃棄契約
廃棄物の成分が解らない最初の取引の場合、実際の契約前に廃液のサンプルとWDS(廃棄物安全データシート)が必要になります。
サンプルは300~500cc(ペットボトル一本分)くらいの量で、この分析結果から、業務の許可範囲内で処理を受諾できるか否かを判断し、可能であればコストはいくらか……といったことが算出されることになります。
WDSには実に数多くの記載項目があります。本来、WDSと製品のMSDS(製品安全データシート)は別物と考えるべきですが、特に爆発などの危険を伴わない剥離廃液においては、理論的に「剥離廃液はワックスと剥離剤の混合物である」と考えて、双方のMSDSを参照してWDSを記入すれば良いでしょう。

具体的な廃棄方法には、以下の3種が挙げられます。
・処理業者が収集する
・収集運搬業者に委託
・廃棄者が直接処理場へ持ち込む

・処理業者が収集する
廃棄物処理業者が運搬業務も行っている場合、排出事業者と処理業者との間で契約を交わせば良いことになります。
日本整油では収集運搬業も行っているそうですが、これについては後述します。

・収集運搬業者に委託
この場合、排出事業者は、収集運搬業者と処理業者、各々と委託契約を結ぶことになります(二社間契約)。
産業廃棄物を委託する場合は、委託者が排出する産業廃棄物に、マニフェスト伝票を必ず添付しなければなりません。
マニフェスト伝票とは「いつ、誰が、どこから、どのような物を、どれくらいの量、どの業者が運び、どこで処理するか」を全て伝票の上で管理できる書類で、マニフェスト伝票を使わない廃棄物の委託・受託は違法になります。

・廃棄者が直接処分場へ持ち込む
ビルメン業者が、現場で回収した廃液を自社に持ち込む行為は、産業廃棄物の収集運搬行為にあたりません。この場合、剥離廃液は自社物であるとされます。
また、排出事業者が、剥離廃液(自社物)を、自社の資産である車で処理業者まで運ぶ場合は、これも収集運搬の行為にはあたらず、運搬業務の許可が無くても違法にはなりません。
この場合は、処理業者と、処理処分の契約だけをすれば良いことになります。 
また、直接持ち込む場合には、ペール缶1缶からでも受け付けることができます。


以下、質疑応答にでた補足事項を列挙します。

・具体的にビルメン業者が負担するコストについて
処理費用:
サンプルの分析結果が出るまで一概には言えません。
あくまで一例として キロあたり50円ほど。
その他、わずかに前処理費用など別途かかりますが、それが大きな割合をは占めることはありません。
運搬費用:
回収量や頻度にもよるので一概に言えません。
あくまで一例として、神奈川県内の一業者でドラム缶10~15本の場合、4万~5万円ほど。
会社の見解としては、あまり少量でも効率が悪いので、一度の回収でドラム缶10本くらいは運びたい。
複数の企業で同日に回収を指定されれば、一社あたりのコストは下げることができるかもしれません。

・どういう状態にして渡せばよいか?
会社でも作業現場でも、収集運搬者の資格で回収に行くことができます。

・複数の現場から集めた、混合物になっている場合のサンプルは?
処理場に持ち込まれる状態のものが処理対象になるので、サンプルは混合された状態のものを提供してください。

・ある程度の量が溜まるまで蓄積する場合、廃液を保管する条件は?
消防法に抵触する危険物でなければ、外部に流出させないことだけが条件です。
腐敗や悪臭などが生じる可能性はありますが、その点が管理できるならば他の制限はありません。

・複数の業者で保管場所を定めて、廃液を集める行為は?
法的に問題はありません。
組合などを作って、その組合が排出者としてマニフェストを作成することになるでしょう。

・資材屋が資材搬入の帰りに回収できないか?
その資材屋が、廃棄物運搬業の許可を得れば可能になるが、現状はそうなってはいません。


参考:
日本整油株式会社

講義3
株式会社タムラテコ 『オゾンによる排水の浄化』

オゾンと紫外線を利用した商品を扱っている株式会社タムラテコ様の発表は、講義というよりも、オゾンを利用した廃液処理商品を開発するための公聴会という趣でした。

ビルメン業者が廃液処理で困っているというので、試しにオゾン生成装置で剥離廃液をエアレーション(廃液中にブクブクとオゾンを放出)してみたところ、以下のような結果が得られたそうです。
6Lの剥離廃液をオゾンで2時間暴気した結果
  暴気前 暴気後
PH 10.2 9
BOD 50800 2920
SS 50800 29200
ノルマンヘキサン 3000 171
亜鉛 600 240
※この資料は文字が潰れて読み取りが困難だったため、講師の方が音読した数値を記しました。

 オゾンでエアレーションすることでBODの低下などが見られた、という上記の結果を踏まえて、ビルメン企業でオゾン生成装置をどのように利用できるか? どのくらいの量を、どのくらいの時間で処理できれば使い易いか? といったディスカッションが行われました。
その場で交わされた意見が、実際の現場で使い易い専用製品の開発につながるのでしょう。

写真は当日持参されていたオゾン水生成装置
参考:
株式会社タムラテコ
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