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手あれの少ない洗剤

メンテナンス情報
手あれの少ない洗剤(手あれへの取り組み)
 
著 木村光成 先生
 
 手肌に優しい中性バスクリーナーが発売された。手肌に優しいを名乗る洗剤は意外に少ない。
 ビルメン現場でもっとも多い災害は手あれであろう。しかし、手あれが取り上げられた事は一度もない。手あれは、転落、滑り事故と比べ、通院もしないため、労災保険に関係ないからであろう。関連協会や指導講師の見方では、たかが手あれと片付けられているが、現場ではかなりの被害が出ている。
 恐ろしいのはスギ花粉と同じアトピーである。いわゆる洗剤アトピーは剥離作業のあとに出る場合が多く、作業後に体の各所にかゆみと発疹が起きるのが一般的である。
 アミンの研究者・川上八十太先生の白い手袋を思い出す。先生も指の湿疹で苦しんでおられた。筆者の場合もノニオン洗剤のアミンに反応しやすい。体調にも大きな関係がある。このために、ビルメン現場を長年勤めたスタッフが現場を離れる例もかなり見受けられる。家庭用洗剤よりはるかに強力な洗剤を使うビルメン現場では、当然のことである。
 このような、いままで取り上げられない手あれなどにも細かく対処する必要がある。我々ビルメン現場の手あれは、一般家庭のそれより広く、皮膚障害全般を意味する。
 
1、手あれの原理
 我々の肌は皮脂という油により乾燥など外部の刺激から保護されて、弱酸性を保っている。
 ところが皮脂は、汚れと同じ性質があるために、汚れを落とす洗剤類で除去されてしまう。その上、多くのアルカリ洗剤は、皮膚の弱酸性を打ち消してしまう。その他に、洗剤に含まれる研磨材やポリエステル繊維、ナイロン繊維などは、皮膚表面を傷つける。その上に、より危険な骨を溶かす弗酸、皮膚を溶かす苛性ソーダ、やけどをおこす過酸化水素などの危険な洗剤が存在する。
 危険な洗剤は使用する必要がある。我々現場は、清掃のプロであるからには、早くきれいに汚れを落とす必要がある。安全な洗剤は汚れが落ちにくい性質がある。
 この矛盾を解決するには、洗剤の判別と使用法のノウハウを身につける以外に無い。そして使用者の技術レベルにより、使用洗剤を限定する。しかし、関連協会も洗剤販売業者も、これにほとんど取り組んでいない。現在、狩野太平氏のグループが、この問題解決に取り組み中である。
 
2、手あれの危険判定法
 手あれやかゆみの危険判定法の1つにパッチテストがある。
 今回の手あれのない洗剤のテストにも、このテスト法が用いられている。これについてビルメン現場で行う場合を示す。このテスト法は、白髪染め染料の説明書には必ず記載されているので参考にされたい。
 
 ペーパータオルを約1cmの円形に切って薄めた洗剤を含ませ、上腕部の内側にテープで止める。1時間後に様子を見て皮膚に異常が無ければ、24時間置き、なお異常が見られない場合は、その洗剤はほぼ安全と判断する。これが現在ビルメンで行われている手順である。
 ただし、ビルメンで使用する洗剤には劇物も多く、その場合は行ってはならない。しかし輸入品の中には劇物や、明らかに皮膚障害の起きる物質を含むものがあり、しかも表示がない場合がある。これに対処するためには、必ず希釈したサンプルからテストを行うことが原則である。
 希釈法は現場で出来る洗剤の見分け方と同じで、 1:原液0.5ccを取り、水5ccを加え10倍液とする。 2:1の液体0.5ccに水5ccを加え100倍液とする。 3:同様にして1,000倍液、10,000倍液を作る。過敏な人は10,000倍でも反応する。
 
写真、パッチテスト用希釈液
原液~10倍~100倍~1000
 
 
3、手あれの防止
 手あれの防止の基本は手袋であろう。しかし、これでは不十分で、必ず保護クリームを併用することである。特に弗酸、過酸化水素,苛性ソーダなどの薬品の場合は、保護クリームが万一の場合にも非常に有効である。これについては、ビルメンテキストでは全く述べていない。
 次に、自分の肌がどのような洗剤に弱いかを知っておくことである。現場の人たちは、特に女性は経験で手あれのし易い洗剤を知っている。ただ、本社や協会がこれ等の情報を有効に活用するかどうかである。特に下請、孫請けの場合はほとんど情報が上がらない。
 
4、新洗剤の手あれ防止理論
 手あれの少ない洗剤は難しい。その理由は、手あれを少なくすれば洗浄力が落ちるということである。我々の手を保護する皮脂と汚れは同じものである。
 ところが、今回の洗剤の新しさは、樹脂ワックスの技術の応用で、手の保護剤を洗剤自身が含んでいるという事だ。つまり、保護クリームを塗布したと同じ状態になるということである。
 洗浄力を落とさないで手あれを保護する、という矛盾を解決しているという点が特徴である。もちろん、これはメーカーの説明であり、これから現場試用を積み重ねなければ正確な評価はできないが、手あれが取り上げられたということは、現場にとりありがたいことである。
今までは現場の手あれや皮膚障害などは見向きもされなかった。また、このように手あれと正面から取り組んだ洗剤の出現により、アルカリ性でも手に優しいなどという裏づけの無い洗剤が少なくなれば幸いである。
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