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洗剤カタログの裏を見る

洗剤カタログの裏を見る ビルメンテナンス情報
洗剤カタログの裏を見る

著 木村光成 先生

洗剤の現場簡易分析の必要性
 洗剤の簡易分析の必要性は、クリーニング総合研究所の林先生がビルメンテナンス業界に提案されて20年になる。しかし、これはビルメン業界では資材商組合や協会の一部の反対で、事実上禁止されていた。だが、最近はかなり緩やかになってきていて、業界紙にも紹介されだした。
 それとともに、洗剤類の、特に輸入洗剤の誇大広告が増えていることもある。マンションデータ偽装やエレベーター事故の風潮を見ても、誇大広告が多くなっていることを理解できるはずである。これ等の効果を鵜呑みにした本社やビルオーナーが指示する洗剤や染み抜きを使用して、犠牲になるのは現場である。中には弗酸のように骨を冒す染み抜き剤も販売されている。これ等の商品を見分けるためだけにでも、洗剤の簡易分析はますます必要になる。
 林先生の言葉を引用すると「もしあなたがプロであるなら、目の前の洗剤を手持ちの道具で、ある程度見分ける知識を持つ必要がある。この簡易判別は主婦の勉強用であり、決して高級なものではない。もし、あなた方がプロなら、ぜひこの一部を身に着けてほしい。このことは洗剤の正しい知識を身につけることでもある」

なぜ洗剤カタログに嘘が多いのか
 カタログは嘘を記載しているわけではない。本来、全ての洗剤には長所と欠点がある。言い換えれば、欠点のない洗剤はない。しかし、カタログに欠点を載せたのでは、売れるものも売れなくなる。そこで良い点を強調して記載する。
 良い点と注意点を共に記載して、長い目で商品を販売しようという良心的業者と、売れれば良いという業者が存在する。最近は良い点だけを、しかもオーバーに記載したカタログが多い。その結果、どんな汚れでも落ちる、欠点のない洗剤が出来上がる。かえってこのような洗剤が売れる風潮がある。
 今ビルメン現場で必要な知識は洗剤の正しい知識である。

分析機関の分析結果は、その商品が優れていることを保証するものではない
 よく、カタログには洗剤の分析結果が記載されている。特に輸入洗剤に多い。
 一番多く利用されるのが日本食品分析センターである。ところが、花王、ライオン、リンレイ、ジョンソンなどのカタログには、ほとんど記載されていない。一部販売業者が言うように、これ等のメーカーは最先端の技術がないから分析を頼めないのが理由だろうか?

 まず知っておくことは、分析機関のデータは、その品質を保証するものではなく、提出されたサンプルの分析内容を保障するだけである。提出されたサンプルと商品成分が同一かどうかは判らないし、ロットごとの品質も判らない。
 それに、分析機関は、依頼者の指定した方法で、依頼書に記載された物質の分析を行うだけである。例えば、依頼者がある毒物の分析を依頼して「含まれていない」という結果が得られたとしても、他の毒物を含んでいるかも知れないのだ。
 商品のカタログ表示は、基本的にはそのメーカーの信用が基本にある。
 このような分析機関は、使用者も分析を依頼して、販売者のデータを確認するためにある機関であり、その商品の品質全てを保障するものではない。販売業者は、商品の良い点が出るような分析を依頼することが多いが、使用者は商品の問題点が出るような分析を依頼する。このように、使用者も分析を行い、メーカーカタログの内容を確認するという使い方が、本来あるべき分析機関の使い方である。

 基本的には、メーカーや販売店の信用が第一であるため、消費者に信用のある、ジョンソン、花王、リンレイなどは、このような分析機関の証明書を取ることは少ない。トヨタがISOを必要としない理由と同じである。
 以前は外国の分析機関のデータが使われたが、最近は国内の分析機関のデータが多い。これは、特にアメリカでは分析機関が多く、業者のためにデータを作成する分析機関も多いことが知られてきたことにもよる。金さえ払えば卒業証書や博士号を販売する業者も多い。特にビルメン関係では、世界共通資格販売が多く、カーぺットメンテナンス資格や石材メンテナンス、ビルメンテナンス教授などの資格が販売されている。  このようにアメリカが関係する学歴詐称が多発して、アメリカの分析機関や資格認定業者の信用が落ちていることが、国内の分析機関を利用が増加している理由でもあろう。この点、EUではこのような業者は少なく、長期間の教育が行われている。技術の習得には時間が掛かるという考えがあるからである。
 30年前には「この商品はNASAで宇宙飛行に使用された」という言葉だけで商品が売れた時代があった。これをNASA商法と呼ぶ。このように、良い点だけを取り出してカタログを作ると、世界一の洗剤や機械のカタログが出来上がる。
 今後、我が国でも国家資格が公開され、ビルメン資格が各所で取得できるようになるが、問題はその内容にあるとともに、資機材販売と結びつく危険性も考えられる。

 以下、最近の洗剤カタログに記載された、内容がオーバーな例や不明確な事例を示す。

●当社の植物性洗剤は、下水のバクテリアの働きで自然分解します。その証拠に、カーぺットクリーニングで回収した汚水のPH値10.6は、3時間後にはPH8になります。石油系合成洗剤は1万倍の水でうすめても、PH値は1しか下がりません。そして回収した汚水のPH値は、一日たっても変わりません。
※石油系界面活性剤は本来中性であり、アルカリ性は含まれるビルダーによる。

●強力な除菌効果がある。
※水でも除菌効果はある。

●当社の染み抜き剤は燐を含んだ強酸性であるが、手につけても安全であり、下水に流せば薄められ、すぐ中性になる。苛性ソーダのパイプつまり除去剤は、劇物ではあるが使用量が少なく、大手洗剤メーカのように、自然に影響を与えることはない。
※どのくらいの量が「少ない」といえるのかが不明確。単に「量が少なければ何でも流せる」では塩酸や硫酸も流せる。

●この洗剤は、アメリカ製特殊洗剤であるため、アルカリでもウールに使用できる。
※ウールはアルカリに弱く、アルカリ洗剤は避けるのが常識。国際羊毛事務局、生活センターなどに問い合わせられたい。

●アルカリカーぺット洗剤であるが、アメリカ製で問題はない。日本のカーぺットでテスト済み。
※化学繊維協会でテストを依頼するとウールカーぺットではテストしないため、安全であるデータが出されることが多い。

●この洗剤は燐を含んでいるが、下水に流せば薄められ問題は起きない。
※燐を含んだ洗剤を販売しても罰則はない。メーカーの自主規制である。輸入洗剤にトリポリ燐酸を含む製品が増えている。ビルメン関連の輸入洗剤に無燐の表示はない。燐の規制は県によりまちまちであることも問題がある。琵琶湖や霞が浦周辺が厳しい。

●この洗剤は強アルカリであるが、配管の汚れは酸性であり、250グラムの苛性ソーダを流しても、下水ではほとんど中性になる。
※配管のどの場所で中性になるのか公式データはない。この考えでは何でも流せることになる。

●弗酸は悪い点ばかりではない。虫歯を予防する働きがある。
※虫歯に使用するのは弗化カルシウムで劇物ではない。

●防カビ性、防菌性、防臭性は強力である。
※これ等は有効期間の表示がないものが多い。


注:簡易洗剤分析についてはビルクリーニング、4月、5月号参照
追記:
 今回エレベータークレーム対応が表ざたになった外国のメーカーと日本のメーカーの考え方の違いが、洗剤カタログの内容においても現れているように見える。我々現場も、今までと異なり、洗剤や資機材の責任を取らされる時代になりつつある。
 Mビルにおいて、撥水剤の効果に対するクレームの責任が、推薦したビルメンに及んだ例もあった。こういったことが、今後増える可能性がある。そんな事態を避けるためには、現場に正確なクレーム情報や、洗剤・資機材の判別知識が必要である。


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