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撥水剤問題

メンテナンス情報
撥水剤問題

著 木村光成 先生

撥水剤が今、問題になっている。
30年前にカーぺットの防汚剤として出発した床用撥水剤だが、「カーぺットクリーニングは存在できなくなる」とまで言わしめたブームも、80年代には一段落した。その後、バブル時に石材ブームが起き、撥水剤は再び息を吹き返した。しかし、売り込み時ほどの効果持続が得られず、各種の問題が起きている。
最近は床用ワックスの剥離洗浄水処理の問題もあり、塗料業界からも参入が増え、撥水剤を名乗る各種の商品が多数販売され、石材だけでなくフローリングなどにも塗布されている。
初期の撥水剤は、発売当時「10年間有効」の触れ込みで販売されていたが、今日の問題多発は、この有効期限を迎えた現場が多いためと考えられる。クレームの発生は、この時期にも関係する。以下2006年時点の問題点を記す。

1:床用撥水剤の基準が全くない。
ほとんどの販売業者は、メーカーである、信越シリコーン、東芝シリコーン、ダイキン、旭ガラス、などの数値を、そのまま表記している。ほとんどが塗料の規格により表示している。
現状では精製水による水玉の出来具合による判別しかない。また販売業者は撥水性がなくとも防汚性はあると主張しているが、これとても現場での裏づけは十分とはいえない。

2:撥水剤はワックスに比べて高価であるため、現場施工業者が希釈して施工した可能性も大きい。

3:土砂にこすられる現場での、現状にあうテスト方法による評価法が必要である。
水をかけたり紫外線をあてるだけのウエザーメータや鉛筆硬度表示では、床に塗布する使用条件を反映していない。外壁などの摩擦のない場所での使用を前提にしている。

4:主成分であるシリコーンや弗素オイルの含有量の表示がない。
塗布時の色調の変化、すなわち自然色仕上げ、ぬれ色仕上げの区別のみである。

5:撥水剤を塗布すると、使用できない保護剤や技法があることについての表示がない。
このため、最近のワックス密着不良などの、保護剤トラブルに撥水剤が関連している場合が多い。

6:現状では、皮膜を作る製品、皮膜をほとんど作らない製品など、多種多様であるが、これ等は少なくとも石英を中心とする土砂よりは柔らかく、床での使用であれば削り取られることは明らかであり、その部分は汚れが付着することは避けられない。
すなわち、外壁や噴水などの使用実績から、床面の使用実績を裏付けることは出来ない。

7:通気性があることを特徴とするが、最近の石材は裏面に保護剤やガラス繊維などを塗布しているものが多く、必ずしも通気性を必要としていない。
最近の石は息をしていない。また、現場での通気性の証明が十分ではない。

8:撥水剤があらゆる面で最良の保護剤とはいえない。
現場と状況に合わせて選択の必要性がある。

9:現状では、石材メーカーの工場施工品が性能が良いといわれている。
この点もカーぺットの防汚剤と同じである。

以下、2006年5月における保護剤と撥水剤を表記する。

保護剤分類表
保護剤の種類 対応石種 撥水剤との併用 使用場所
水性ワックス 鏡面 × 壁面、カウンター
練りワックス(着色) 鏡面 × 壁面、カウンター
樹脂ワックス 鏡面、バーナー × 床面
ウレタン樹脂ワックス 鏡面、バーナー × 床面
撥水剤(浸透型)
アルコール、溶剤、水性
鏡面、バーナー   外壁、トイレ、床
撥水剤(皮膜形成型)
アルコール、溶剤、水性
鏡面、バーナー   外壁、トイレ、床
撥水塗料型
アクリル、エポキシ、含有
鏡面、バーナー   外壁、トイレ、床
塗料(1液型、2液型)
ウレタン、エポキシ
鏡面、バーナー × 外壁、トイレ、床
珪酸系浸透剤 鏡面、バーナー × 床、コンクリート

撥水剤クレーム事例

1:高価であるのに、数ヶ月で撥水作用がなくなった。
2:石材の内部から発生した汚れやさびが取れない。
3:ワックスや他の技法への切り替えが出来ない(除去が難しい)。
4:業者が規定より薄めた製品を塗布したのではないか、とのクレームが多い。
5:撥水剤データは塗料データがほとんどで、床材使用のデータが表示されていない。
鉛筆硬度、ウエザーメーター、などのデータは、こすったり歩いたりのデータではなく、壁面、屋根などの塗料を対象としたデータである。

写真:各種撥水剤の乾燥皮膜である。多様性がわかる。


以上の資料は、2006年5月『神奈川県ビルメンテナス協会セミナー』で使用した資料である。
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