現場で出来る鉄錆の見わけ方と錆びぬき法
著:木村光成 先生
鉄錆についての研究は膨大な量がある。
過去の鉄は国家なりの言にある通り、兵器、航空機、船、ビルなど錆の研究は多い。また音楽テープやステルス戦闘機の塗料などのTDKは、鉄錆の研究でなり立つともいえる。
これに対してビルメン業界では、鉄錆について取り組みを、全く考えていない。鉄錆については一般的な対応と、残りは専用洗剤を使用するとしてお仕舞いにしている。
錆抜きは、一番多いのが金属の錆取りである。
しかし、鉄錆も付着している素材により、落とし方も使用薬品も異なる。薬品だけで10種類を越える。そして、その組み合わせと使用濃度、一次処理、二次処理など、各種技法の組み合わせが必要である。
そのためには繊維素材の知識、薬品の知識、錆の理論の3つをはずすことは出来ない。
鉄錆について独自の研究をしているのがクリーニング業界である。クリーニング業界では繊維と染色により処理が異なり、染色の知識も必要になる。
清掃に近い鉄錆では鉄道車両のさびが代表である。新幹線ではいまだ洗剤塗布に馬毛ブラシを使用している。洗剤が酸性で、かなりの部分鉄錆を対象としていることがわかる。
ところが、全く鉄錆研究に取り組んでいないのがビルメン業界であり、最も対象素材が多いのもビルメン業界である。石材、トイレ便器の金属部分、カーぺット、ガラス、プラスチックなどなど、これらに対応するには一冊の本が出来る。
ビルメンで必要なことは、その錆がどこから来るのか? そして、なぜ赤錆と黒錆があるのか? 東京都庁の石材の錆は、なぜ時間が経って出てくるのか? などなど
ビルメンテナンス業界に独自の鉄錆の体系(現場で出来る鉄錆の見わけ方と錆びぬき法)はクリーニング総合研究所の林先生の助言によりまとめて、春原氏に発表をお願いした。しかし反対があってビルメンテナンス誌に発表できず、設備と管理のご好意で1994年12月号に石材としみぬきの関係として発表できた。
当時カラーページはこの雑誌しかなく、実験セミナーの手順をカラーで発表できた。今回、錆の発生から錆の種類まで実験で追うことを行い、錆無機薬品の主なものを紹介する。
ビルメン現場には薬品は何もない。本社は余計なものに知らん顔。100円出すのもよい顔はしてくれない。鉄分検出セットなどは夢の話。その場合、噴水、トイレの水、石材の錆を検査するには身の回りの資材を使わなければならない。それに、やり方だけでなく理論を知らなければならない。
この20年間封印されていた林先生の考えを残す最後のチャンスが今回のセミナーである。
また、錆の原因がビルメンにないことを証明できれば、しみぬき費用は当然請求でき、対策も求められる。
最近のある事例を挙げる。
さいたま新都心で石材に錆が発生した。大手ゼネコンK社によれば「この石は鉄分がない。1年を過ぎた今、出ている錆はビルメンのメンテ範囲であり、当然錆びぬきはビルメンの責任である」 あなたなら、どのようにデータをつけて反論ししみぬき費用を管理会社から出させるのだろう?
次に問題なのは弗酸系洗剤の増加である。しかも安全性をうたっている。手につけても安全な酸性洗剤、弗酸を使用しない安全洗剤でトイレの黒ばみ、ネオバリエ、ライムストーンに使用可能の表示があり、食器洗剤なみの安全の印象を受けるが、中身は弗化アンモニウムであり、劇物である。これは安全性のすり替えで、和歌山の砒素とネズミ捕りの毒えさとどちらが危険かの比較に過ぎない。今回のビルメン展でこれらの洗剤がふえている理由は、鉄錆関連の汚れの増加を示している。
セミナー内容(ビルメン現場の錆抜き理論)
1、 見える錆と見えない錆
2、 石器時代から使われた錆(ベンガラ)
3、 墨汁は水溶性汚れではない
4、 錆の検出法
5、 錆はどこまでがビルメンの責任か? 管理会社への提案書、報告書
6、 カーぺットの錆
7、 石、トイレの錆
8、 水の錆
9、 金属の錆
10、 もらい錆とは
11、 赤錆と黒錆
12、 錆抜き薬品
13、 染料としての錆、鉄漿
14、 錆抜きの手法
注:この記事は、木村先生の実施された実験セミナー(2005年7月)の資料です。