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実験セミナー『フローリングの見分け方』

2005年9月27日
第4回実験セミナー
フローリングの見わけ方

主催:試みの会
講師:木村光成 先生
会場:ジョンソンディバーシー㈱ フロアラボ

 ビルメンテナンス関係者による勉強会『実験セミナー』が行われました。
フローリングは見た目の良さや高級なイメージ、自然志向もあいまって、店舗や個人宅をはじめ多くの建物に取り入れられています。ダニによるトラブルを避けるため、カーペットの使用を避けた場合に、代わって足元を演出するのにも、木目の美しいフローリングは適していました。
しかし、最近、このフローリングに関連するトラブルが多発するようになりました。せっかくメンテナンスしたのに、クレームが発生。まして被害が大きく「弁償」などということになれば、メンテナンスを発注する方も受注する方も損失を被ることになります。
なぜトラブルが発生するようになったのか?
どうすればトラブルを避け、なおかつ効率良くメンテナンスできるのか? 
どちらの疑問にも共通する答えは「現場が必要な知識を身につけること」。
今回の実験セミナーでは、木材の基礎知識とフローリングで発生しがちなトラブルの原因、基本的な注意点について研究しました。
実験セミナーの様子
 一昔前、木材のメンテナンスは難しいものではありませんでした。大抵の木材は表面が塗装され、隙間には耐水性のある接着剤が使われていたからです。
ところが最近、ハウスシック症候群などの環境問題が取りざたされるようになり、フォルムアルデヒドやトルエンなどの含有が問題視されるようになりました。メーカー各社も代替品の研究を進めていますが、現状、これらの成分が使用を禁じられたことは、そのまま塗料や接着剤の使用が禁じられたことを意味します。また、塗料や接着剤を使わないことが「クリーンである」「自然に優しい」「環境に良い」とする風潮から、一切塗装されていない『無垢の木材』が好まれ、メンテナンスにも『天然素材』の使用が求められるようになりました。
つまり木材の扱いに関しては、技術レベルが50年前まで後退したも同然。
今、ビルメンテナンスの現場では、ここ50年不要とされていた木材の知識や判別技術が、再び必要とされているのです。

木材の分類と、メンテナンス危険度

単層木材 同一の木材から切り出したもの。いわゆる一枚板。
無垢で使用されている場合、水や剥離剤など液体の染み込みが原因で、変色やそりなどが起こりやすい。

複合木材 複数の木材を貼り合わせてある。合板。
見栄えの表面板が数mm程度あって、その下層にはベニアなど安価な板材が重ねられている。この表面板の厚みが3mm以下になると、サンディングなどの研磨処理をしただけで、表面板が磨耗して下のベニア層が露出してしまう。

 木材の分類は、いずれも表面仕上げによって、さらに細かく分類されます。
この分類でメンテナンスの危険度は、木材種類で「単層>複合」、表面仕上げでは「無垢>天然オイル仕上げ>ワックス仕上げ>工場塗装>現場塗装」という順になります。つまり無垢の単層木材が、最も取り扱いの難しいフローリングということです。

トラブルの例
そり 板そのものが変形して反り返ってしまう。重症。
ふくらみ 板が膨れ、床が持ち上がってしまう。
きしみ 床を踏むと、キィキィと音がする。
変色 薬剤などの染み込み跡が残ってしまう。
剥がれ 特に合板などで、木材の表面がめくれ剥離してしまう。
塗装の剥がれ 塗装した木材で、表面の塗膜が剥離してしまう。

トラブルの発生原因
上記トラブル例の原因を考察すると「洗浄に使った水や剥離剤の染み込みによる、そり」「染み込みによる、ふくらみ」「染み込みによる、変色」……と、いずれも液体が木材に染み込むことが最大の原因に挙げられます。塗装や板の剥がれについても「液体の染み込み→木材の変形→表面の割れ・剥がれ」というように、やはり液体の染み込みが最大の原因になっています。
作業対象が無垢の単層木材の場合、表面からの染み込みに注意しなければならないのは当然ですが、もし表面が防水塗装された複合材だったとしても油断はできません。床板の継ぎ目、その隙間から液体が入り込むと、木材の側面で染み込みが発生して、変形や剥離の原因になってしまいます。
また、液体の染み込み具合に比例してトラブルのリスクが上がるため、木材を比重で比較すると比重の重い方が危険度は高くなります。


実験の様子
木材への染み込みと変色を確かめる。
テスト用木片に中性剥離剤とアルカリ剥離剤を一滴落とすと、染み込みが発生しました。中性剥離剤は乾くとともに色が薄れていきましたが、アルカリ剥離剤は浅黒く変色して染み痕が残ってしまいました。
撥水剤や界面活性剤の有無を確認する。
木片に精製水やIPAを垂らすと、無垢の木片(左から2番目)には染み込みが発生。その他は表面が塗装やワックスで処理されているので染み込みは発生していませんが、水滴が球状になるか広がるかで、撥水剤や界面活性剤の有無を確かめることができます。
またIPAではワックスのアルコールに対する耐性を確認することもできます。
剥離剤の性質を確かめる。
木片の色の違うところには、それぞれ性質の異なるワックスを塗ってあります。これを中性剥離剤とアルカリ性剥離剤で拭ってみて、赤い方はアルカリ剥離剤で、黄色い方は中性剥離剤でワックスが剥離することを確かめました。
現場によっては、性質を異なるワックスをトップコート/アンダーコートと重ね塗りすることで、一度の処理ではアンダーコートまで剥離できないようにして、木材の表面を守っている所もあるようです。

木材判別セット
今回の実験では、以下のような試験道具を使用しました。
こういった試験道具を作業現場に持参して、フローリングの目立たない場所(家具の陰など)でテストを行い、使用されている塗料やワックスの性質を理解できれば、トラブル発生のリスクを下げることができます。
セット内容
各種試験用液体(精製水、アルカリ剥離剤、標準中性薄利剤、イソプロピルアルコール(IPA)、前処理判別液)、PH試験紙、スポイト(1cc)、円形容器、フローリングサンプル

円形容器は、少量のワックスを固めて試験用液体を注ぎ、溶け具合を確認するのに使用します。

木材は吸水だけでなく湿度や温度によっても変形します。フローリングに床暖房を併用している現場もありますが、そのような場所で、木材を湿らせたうえに暖めたり冷やしたりするのが好ましくないことは、素人にも想像に難くありません。
その一方で、適切にメンテナンスされたフローリングが快適であることも確かです。
フローリングを永く快適に保つために、プロのメンテナンススタッフに勉強が必要であることはもちろんですが、店舗や家庭で日常的な掃除をするのにも、木材の吸水性や隙間の存在みたいな、ちょっとした注意点を知っておくと良いでしょう。
なにしろ、どんなに木材の取り扱いに習熟したスタッフでも、完全に変形してしまったフローリングを新品に戻すことはできないのですから。


参考:
ビルメンテナンス『試みの会』
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